First You Fall (Kevin Connor Mysteries Book 1)
A**A
異装LLA受賞作…限りなくM/Mに近いゲイ・ミステリ
本作は2009年度のLambda Literary Awardのゲイ・ミステリ部門において、処女作にして受賞の栄誉を授かった堂々たる…M/Mハイブリッドです。LLAと言えばかのNavaがミステリ部門で5回受賞したことからも分かるように、LGBT文学賞としてそれなりの格を持つ賞、M/M作家が受賞候補に肩を並べることはあまりなく(例外として大御所LanyonやL.A.Witt、Fordなどいますが)総じて社会派的側面の強い、シリアスな作品が選考される傾向が強い気がします。ちなみに昨年は、Boystownシリーズで数年来候補に挙がっていたThorntonが順当に賞を射止めました。 しかるにこの年、従来とは結構毛色の違う作品が受賞しました。著者は中年のポッドキャスター、この作品が処女小説です。物語は主人公である23歳のKevin Connorの一人称で語られます。Kevinは身長160センチと非常に小柄で、いわゆるtwink的な可愛らしい容貌の持ち主です。注意欠陥障害があって注意力散漫になりやすく、活発で明るい性格。実は初恋に破れてから恋愛不信となり、恋愛を拒否する代わりに大学時代からセックス業界に入って、容姿と床上手を生かし高級レントボーイとして「世界最古の職業」に就いています。 ある時、Kevinの顧客に成り損なった後に友人となった初老の富豪が、突然墜落死を遂げ、自殺という警察の見立てに不審を抱いたKevinは、素人ながら独自で調査を始めます。この事件の担当刑事が何と、忘れじの初恋の君Tonyであり、7年ぶりの再会という筋書き。Kevinは幼馴染みのお隣さんだった3歳年上のTonyを子供の頃から恋しており、16歳時に念願叶って関係を持ったものの、僅か数か月後にはTonyにメールで別れを告げられてしまいます。Tonyはそのまま大学に行って傷心のKevinを置き去り、以来2人は会わず終いでした。イタリア系の旧式な家庭に育ったTonyは、マッチョな自分を貫くためゲイであるのを否定しようと、後ろ髪を引かれつつもKevinを捨て、今では家庭も持っています。しかし結婚生活はうまく行っておらず、再会した途端に2人の関係は再燃し、だがKevinの生業を知ったTonyは激しく動揺して再び離れようとし…等々と展開する恋愛模様と同時進行で、Kevinの素人探偵としての捜査が進められます。 Kevinのヒップで軽い語り口はいささか、人によっては相当鼻に付くかも知れません。また年齢の割にレトロな趣味もあるKevin、どうも著者の実年齢を反映しているだけに見える時も多いです。鼻に付くとか気に障るとか言えば他にも、Kevinの顧客は皆金も地位もあり、無体な要求をしない「趣味の良い」人間ばかりという書き方(本番しないで体の臭いを嗅ぐだけもあるとか)で、あまりに売春が安直に美化されていたり、脇役が、売春業元締めでトランスジェンダーのドラッグクイーンや、Kevinの母親や親友など、大袈裟な感情表出をするキャラが多くてワザとらしかったり。プラス相手役のTonyは長身筋肉質の超絶美男子マッチョと、類型的なM/M攻だったりします。 これだけ見ると、本当にゲイ・ミステリ?どこがM/Mと違うの?と思う向きもあるでしょうが、そこは一応LLA受賞作なのでポイントは押さえてあります。つまりロマンス(セックス)部分の分量がM/Mより圧倒的に少なく、性描写も僅かで露骨でもない、いや今は普通のエンタメでも性描写は露骨傾向ですが、要するにミステリが主体となっています。視点もM/Mのようにクルクル変えずKevin一人に固定しています。ちなみにミステリ部分は格別面白くもないのですが、何とかKevinと最後まで歩調を合わせて落とし込んでいます。それにしても全体のトーンは一般的な受賞作とはちょっと異なる感を受けるところ、過去にはBidulkaのように緩めのミステリも受賞していますし、この年の他の候補者を見るとHerrenやPlackeyとか古株が多くて新鮮味がないので、新顔の著者には幸いしたのでしょう。 ところで著者はこのシリーズを三部作で想定し、事実3作で終わらせています。2作目の出来もまあまあ、3作目で2人の関係は予定調和的に収まりが付き、ロマンス面ではもうネタ切れ感あり。しかし3作目の後書きで著者は、Kevinをもっと書くかも知れない、読者の要望があれば…みたいなことを仄めかしていました。現時点で4作目が現れる気配はないので、残念ながら読者の反応が乏しかったか、著者の意欲が頓挫したかのどちらかでしょう。正直続投への希望は特にないですが、もし新作が出たら覗いてみたい気はします。それほど優れたシリーズとは思わないものの、Kevinのノリに気が合えば好きになるでしょうし、KevinとTonyの関係は、再会時のKevinのトキメキや不安、終盤のTonyの告白のシーンなど、大変萌えのツボを押さえて書かれています。1作目だけは値段も安いし読み放題対象でもあるので、普通のM/M感覚で読んでみてください。
D**E
fun summer read
The best thing about this book is that it has a decent plot and an interesting mystery. Surrounding that solid core is a lot of fun, characters you like and those you despise. Situations that are alternately funny, sexy and tense. Great summer fun.
T**I
米国BL探求中…エンタメ的ストーリー展開が爽快。
男性作家だが、ゲイ小説ではなくBL小説。ゲイ小悦とBL小説の線引きは、BL世界では「作者が主役を贔屓」しており、「恋愛絡みの心情がストーリー上重要」で、「ハッピーエンドが原則である」ってことかしら。これがゲイ小説になると作者の主役贔屓はあるにはあるが、ハッピーエンド原則がない。ゲイ文学になると「作者は主役を贔屓にしてはイケナイ」という神の視点の原則に従わなくてはならなくなる。我ながら好き勝手に定義しているが、マイ定義に従うと、これは100%BL小説だ。良い意味で漫画っぽい小説。キャラもストーリーもキネティックに躍動し、どんどん進行してくれる。主人公は二十三歳の高級エスコート(男娼ですな)の美青年ケヴィン君。ある日、彼の友人が飛び降り自殺をする。他殺を疑ったケヴィン君は独自の調査に乗り出し…ってな設定で、アテクシが個人的に嫌いな「シロート探偵物」なんだが、シロート探偵をせざる得ない理由が心情的にも実際的にもシッカリしている。高級男娼としての独自の情報網が事件解決上重要になってくるんですな。ストーリー要素がロジカルに組み立てられているんで読んでいて気持ちが良い。かてて加えて、ケヴィン君は主役たる地位に恥じない「頑張るヒーロー」としてのスピリットや内実を具えている。ちょっと保留部分を上げると、滑り出しはそんなに引き込まれないってのが惜しい。加えて、ケヴィンが男娼という職業にえらく屈託なく従事している点はキャラ造形上のリスクだ。「売春が平気」というパーソナリティ設定を軽く扱う訳にはいかないはず。次に問題なのは、初恋の相手であるトニーとの関係。まず、トニーとの過去の経緯の回想はもっと印象的に書くべき。そして二人の再会場面ももう少しドラマチックにやらんと、七年ぶりの出会いのインパクトが伝わらない。この一連の流れの印象付けが弱いせいで、トニーがキャラ的に割を食っている。しかし最大の問題点は、「思いやりのある好青年」として設定されているケヴィンが、既婚者であることを承知でトニーを誘惑しようとするって点。BLというジャンルはハッピーエンドが約束されてる手前、主人公を「好かれるキャラ」にしなければならない。絶対的な掟ではないが、逸脱する場合には書き手にそれなりの手腕が必要。「売春が平気で、気軽に不倫を誘うキャラ」は「好かれるキャラ」になれるのかという問題と、「そのようなキャラを自分は高い好感度で書けるのか」という点について、一巻時点では作者さんの思慮が足りないような印象がある。これ以外の部分ではケヴィン君は十二分に魅力的なキャラなので、かえってこの部分が喉に引っかかる魚の骨のように感じられる。そんな訳で、四つ星にしようかとも思ったが、ケヴィン母がえらく良いキャラで彼の家族絡みのエピソードは全て愉快、コミックリリーフ的な部分は文句なしに楽しい。もう五つ星でええわ、と五つ星。
M**D
Fun Vacation Reading
Kevin Conner is a high priced call boy who enjoys his work. The petite blond twink has a steady base of undemanding clients, and a drag queen pimp who carefully screens new customers. Kevin’s ‘job’ is ostensibly in aid of furthering his education in psychology, but with his attention deficit disorder it’s easy for Kevin to stay in the moment.Everything changes when Kevin’s friend and mentor falls to his death. The police, including Kevin’s old flame Tony, think it’s a suicide but our young hero doesn’t believe it. With the help of friends and clients he sets about trying to find out what really happened, while trying to sort out his parent’s marriage and what he feels for Tony.“First You Fall” is a surprisingly fun little mystery. Early on it becomes obvious that this is as much a light – almost screwball – comedy as a mystery, and if you accept that, just go along for the ride, you’re in for an enjoyable few nights’ read. The deceptively humorous story makes the twist to the mystery at the end all the more surprising.Kevin is a rather engaging character, in spite of the superficiality that his age and profession might imply. In turn, he is surrounded by a large cast of equally well-drawn characters. These include some of Kevin’s customers, who are portrayed in a quite non-judgmental fashion. If the story has a major weakness, it’s in the final big scene, which stretches credulity just a little too far.Taken for what it is, a light fluffy tale, “First You Fall” is fun read. It would be perfect for you summertime vacation reading.
B**D
Outstanding first novel features realistic, likeable characters and great wit
Kevin Connor is a 23 year old blonde, twinkish high-priced "call boy"/gay escort who loves his work and friends, but is reluctant to allow himself to fall in love, still smarting from his breakup with Tony, his first love in high school. Kevin also suffers from a touch of Adult Attention Deficit Disorder, and complex emotional situations can sometime overwhelm him to the point he passes out. So, when he goes to visit his friend and mentor, Allen, and finds the man's body on the sidewalk in front of his high-rise NYC apartment building, and is told to step back by the officer on duty - who turns out to be his long-lost ex, Tony - Kevin soon joins his friend lying on the sidewalk. Ultimately, Kevin teams with his flamboyant best friend, Freddy, with some help from his computer-hacker friend/client Marc, and - despite distractions from a myriad of kinky clients and an unexpected visit by his overbearing mother - vows to prove wrong the police's finding that Allen committed suicide. It's a journey that uncovers secrets about the dead man's adult children, a sinister "gay conversion" program, revelations about people you thought you knew well, and agonizing over trying to reconcile with his (now married) ex.With several major gay mystery series having wrapped in the past five years, there is definitely a need for some fresh ideas in that genre, especially utilizing characters that are likeable, relatable, intelligent and realistic. First time novelist Sherman hits on all four cylinders there, and infuses just enough humor in his book to keep the reader smiling as well as enthralled, making it hard to put the book down even for a minute. Looking forward to his announced sequel, and hopefully much more after that. Absolutely recommended highly, with five hustling stars out of five!
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1 month ago
2 months ago